その五つか六つ年上の女の人の愛車は、葉山に住む彼女の叔父さんからのお下がりという古いアルファ・ロメオのジュリエット・スパイダー——どこか昔の日野コンテッサに似ている。車が車だけにメンテナンスに費用がかさむらしく、彼女は普段から、結構、節約のオーラをまき散らしていた。最早日本では手に入らなくなった部品は、知り合いの鋳物工場に頼んで一点ものとして作ってもらっているらしい——小さな部品でもひとつ十万円は下らないと噂で聞いた。ところが、お金がないという割りには、車のダッシュボードにコクトーの『ポトマック』の原書なんかが雑に放り出してあったりするから、ぼくらとはお金の使い方が違うのは明らかだった。あの頃、週末に森戸海岸のドライブインシアターへ行けば、彼女の車は必ず見つけられたし、そのあと、ユージさんのビーチクラブで...軽蔑
アメリカ東部で『田舎』と同意語が『アイオワ州』。そのさらに片田舎の大学に短期留学制度を使って来て以来、本当のところ、授業にあまり身が入りません。方言も概ねわかるので不自由はないのですが、そんなことも理由なのか、講義に面白味が感じられなくて困っているところです。それで、日本にいるきみのことばかり考えて暮らしています。ところで、こちらのBarは日中は喫茶・軽食屋も兼ねるので、日本の飲食店同様、遅くても午前11時半には店が開きます。最近、講義をサボっては”Kenny's”というBarに入り浸っています。五十代後半と覚しきバーテンダーと親しくなりました(Kennyというのは創業者である彼の祖父の名前だとか)。ぼくが、あまりに入り浸るので、彼にとうとう言われました。「ぼくの爺さんが若かった頃、つまり、ここに爺さんが...ガラスの動物園
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