名もない花よりも
近くの公園で、黄色い花が咲き誇っている。以前は名前があったが、いまはない。といっても、それはぼくだけの認識にすぎないのだが。その花には名札があった。そして名前があった。たしか、ギリシャ神話の女神のような名前だった。誰かのいたずらで、いつのまにか名札がなくなってしまった。あまりに長い名前だったので、私は覚えることができなかった。だから、名札がなくなると同時に、名前もなくなってしまったのだった。もちろん、花は名前があろうがなかろうが関係なく咲いている。私だけがその花の名前を失って、私のなかで、その花の存在をあやふやにしているにすぎない。名前といえば、私にはネットで使う名前がある。日常生活では通用しない名前だが、ネットでは、その名前がないと私は存在しないことになる。いや、名前があるだけでは駄目なのだ。なんらかの...名もない花よりも
2025/05/15 11:37